研究概要 |
長期安静状態による身体活動低減が生体内酸化ストレスならびに抗酸化能力に及ぼす影響と抗酸化ビタミン補充の意義に関して,基礎実験モデルから検討した.生後6〜7カ月齢のF344系雄性ラットを通常飼育の(1)対照群,(2)長期安静群,(3)抗酸化ビタミン補充長期安静群の3群にグルーピングした.長期安静は後肢懸垂法により行い,期間は3週間とした.グループ3には,懸垂6日前から実験期間を通して,RRR-α-tocopherolを1日1回,体重1kgあたり50mgを隔日,腹腔内投与した.グループ1と2にはRRR-α-tocopherol free製剤をプラセボ投与した.測定項目は血清基質(総蛋白,総コレステロール,中性脂肪,過酸化脂質[TBARS],ビタミンE)濃度,後肢筋(腓腹筋,足底筋,ヒラメ筋)湿重量,ヒラメ筋TBARSとした. 後肢懸垂により,血清総蛋白,総コレステロール,中性脂肪濃度に変化はみられなかったが,血清TBARS濃度は減少した.ビタミンE補充は血清ビタミンE濃度を上昇させ,後肢懸垂による血清TBARS濃度の低下を助長した.後肢懸垂により骨格筋の萎縮がみられ,とくにヒラメ筋で顕著であった.ヒラメ筋内のビタミンE濃度は後肢懸垂では不変であったが,TBARS濃度は血清と同じく低下傾向を示した.ビタミンE補充によりヒラメ筋ビタミンE濃度は増加し,TBARS濃度を低下させた.以上の成績は,長期安静状態ではエネルギー消費量の減少により生体内酸化ストレスレベルの低下が生じ,ビタミンE補充は酸化ストレスをさらに減少させることが示唆された.長期安静から日常生活復帰に伴うエネルギー代謝の急激な変化は生体への酸化ストレス増加を促すと考えられるため,長期安静期間における抗酸化ビタミン補充は一過性の酸化ストレスから生体を防御する上で意義あるものと推察された.
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