研究概要 |
長期安静が生体内酸化ストレスならびに抗酸化能力に及ぼす影響と抗酸化ビタミン補充の意義について,基礎実験モデルから検討した.生後6〜7ヵ月齢と25ヵ月齢のFischer344系雌性ラットを用いた.長期安静状態は後肢懸垂(3週間)により作成した.ビタミンE(RRR-α-tocopherol)補充は1日1回,体重1kgあたり50mgを隔日,腹腔内投与した.測定項目は血清基質(総コレステロール,ビタミンEなど),酸化ストレスの指標として血清ならびにヒラメ筋内過酸化脂質(TBARS濃度),総抗酸化能力(Serum total antioxidant status ; STAS)とした 生理的な加齢変化として,血清ならびに筋内TBARSの増加を認めた.いずれの月齢においても,長期安静により血清TBARS濃度の低下を認めた.筋内TBARSは若齢期では低下傾向を,高齢期では不変であった.ビタミンE補充は血清ならびに筋内のビタミンE濃度を増加させ,TBARS濃度を低下させた.高齢ラットで酸化ストレスとSTASの変化を検討したところ,血清TBARS濃度の低下とともにSTASも長期安静により減少した.これは長期安静による活性酸素ストレスに対する耐性の低下を意味する.ビタミンE補充により,血清ビダミンE濃度,ビタミンC濃度が上昇し,TBARS濃度は低下したが,STASは改善しなかった. 以上の成績は,長期安静状態では酸素消費量の減少により生体内酸化ストレスレベルの低下が生じ,ビタミンE補充は酸化ストレスをさらに減少させることが示唆された.長期安静から日常生活復帰に伴う急激な酸素消費量の増加は,生体への酸化ストレスを増加を促すと考えられるため,長期安静期間における抗酸化ビタミン補充は一過性の酸化ストレスから生体を防御する上で意義あるものと推察された.とりわけ,高齢期では,一酸化ストレスによる組織障害の可能性が高まることから,抗酸化ビタミン摂取は有用であろう.ビタミンE補充のみでは,STASの改善が見られなかった結果から,バランスよく抗酸化剤を摂取する必要性が考えられた.
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