研究概要 |
この研究において、臨床と実験の両面から手術侵襲の生体における影響とそれに対する薬剤の保護効果を白血球及び血管内皮を用いて検討した。まず、リポポリサッカライドによるエンドトキシンショックモデルをラットで作成し、ヘパリン使用群とコントロール群との胸部大動脈リングの弛緩率の違いからヘパリンの血管内皮機能維持作用を確認した。さらに、臨床での冠動脈バイパス症例20例における検討では、低侵襲といわれている体外循環不使用例に比べて体外循環使用例では循環血液中の白血球中炎症性サイトカイン及び接着分子(HO-1,IL-1,IL-8,IL-10,TNF-α,PECAM, Mac-1)のm-RNA発現が有意に多いことから、循環血液の体外循環装置への直接の暴露が一つの誘因と考えられた。この結果は平成14年4月の外科学会総会、及び平成14年7月の冠動脈外科学会において発表した。つぎに塩酸オルプリノンの血管拡張作用を、冠動脈バイパス術で使用するために採取された橈骨動脈グラフト片を用いて検討した。塩酸オルプリノン使用群はコントロール群と比較して、塩酸パパベリン群と同様の血管弛緩反応が得られた。以上のことから、心臓外科手術における体外循環での侵襲の病態整理の一部が明らかとなり、それに伴う血管の異常収縮、弛緩に対する保護効果を示す薬剤の可能性が示唆された。
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