研究概要 |
【目的】膜4回貫通蛋白CD9は、癌組織での発現レベルが予後と反比例の関係にあることから癌の浸潤・転移と関与していると考えられているが、その機序はほとんど解明されていない。この研究で、肺癌細胞株におけるCD9発現レベルを調節してCD9が浸潤・転移の過程でどの様な現象に関与しているかを解明する。 【方法・結果】CD9及びアンチセンスCD9遺伝子、コントロールとして大腸菌のβ-galactosidase遺伝子を発現する非増殖型アデノウイルス(Ad.CD9,Ad.ASCD9,Ad.LacZ)を遺伝子工学的に作製し、ウイルスベクターを調整した。ウイルスの力価は、293細胞を用いてプラークアッセイを行い定量した。蛍光免疫染色法及びWestern blot法にて調べた肺腺癌細胞株A549のCD9蛋白発現レベルは、感染36時間後よりAd.CD9群でMOIに比例して増強し、Ad.ASCD9群では減弱した。また、Ad.CD9によりCD9を強発現させた細胞では、細胞全体が丸くなる様な形態の変化を認めた。Ad.CD9を用いてA549細胞にCD9遺伝子を導入して細胞増殖アッセイを行ったところ、30MOI(Multiplicities of infection)で72時間後にはコントロール群と比較して細胞増殖が約40%抑制された。 【考察】Ad.CD9及びAd.ASCD9は、肺癌細胞株A549においてCD9の発現を調節する事が可能で、肺癌の浸潤・転移におけるCD9の役割を検討する研究に有用であると考えられた。また、CD9は肺腺癌細胞株A549において形態形成に関与し、細胞増殖を抑制することが示唆された。
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