研究概要 |
頚椎症性脊髄症に代表される慢性脊髄圧迫病変の知覚機能障害を客観的に評価するのは困難である.本研究では脳磁図magnetoencephalography(MEG)を使用し,somatosensory evoked magnetic fields(SSEMFs)を測定することにより慢性脊髄圧迫病変によって誘発された知覚機能障害を定量的に解析・評価することを目的に行った.対象は頚椎症性脊髄症の5例(52-74歳,平均62歳,男:女=3:2)で,204-channel helmet-type MEG system(Neuromag社, VectorView)を使用し,術前および術後に両上肢の正中神経刺激で誘発されるSSEMFsを計測した.正中神経の刺激後約20msecの潜時で現れる最初の反応であるN20mのintensityとlatencyを測定した.手術はチタンケージによる頚椎前方固定術あるいは頚部脊柱管拡大術を実施した.尚,手術中は体性知覚誘発電位somatosensory evoked potentialでモニタリングしたが,脊髄減圧前後でN20のintensityおよびlatencyに変化はなかった.また,術前後にNeurological Cervical Spine Scale(NCSS)を使用し,知覚スコアを算出した.コントロールとして健康人5例のN20mのintensityおよぴlatencyを計測した.頚椎症性脊髄症の全5例でコントロールグループよりN20mのintensityが有意に低値を示し,うち3例で術後N20mのintensityが有意に増大した.また,NCSS scoreとdipole intensityの間に相関関係が存在した.MEGによるSSEMFsの測定は頚椎症性脊髄症によっておこる知覚機能障害を客観的および非侵襲的に評価できる点で有用である.
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