研究概要 |
ラット脳腫瘍モデルを用いて、グリオーマの治療を目的としたサイトカイン遺伝子導入細胞の脳内移植による免疫療法の実験的検討を行った。human IL-2cDNA, murineIL-4cDNA, mirine GM-CSFcDNAおよびmurineIL-12のp35とp40をIRESでつないでレトロウイルスベクター(LXSN)に挿入し、これを用いてラット脳腫瘍細胞9L-gliosarcoma(9L)とマウス神経芽細胞種C1300にIL-2遺伝子,IL-4遺伝子,GM-CSF遺伝子およびIL-12遺伝子を導入した。ラット脳腫瘍モデルを作製し、生着3日後にこれらの細胞の脳内移植と皮下免疫による治療を行なった。IL-2産生細胞移植では半数のラットで治癒が確認されたが、IL-4,IL-12,GM-CSF産生細胞移植では軽度の増殖抑制効果にとどまった。皮下免疫を併用しない場合、syngeneicな9L細胞を用いると髄腔内播種が高率に観察され、脳内移植にはxenogeneicあるいはallogeneicな細胞が安全性の面で優れていると考えられた。CTL assayでは、皮下免疫を併用したラットにおいて腫瘍特異的CTLの誘導が確認され、免疫組織学的にも、皮下腫瘍と同等のリンパ球浸潤が認められた。また、皮下移植によるCTL誘導の効率についても検討し、放射線照射した野生型9Lが有効であり、IL-2産生細胞でほぼ同等、他のサイトカイン産生細胞の併用ではむしろ減弱されてしまうことが明らかとなった。また、神経前駆細胞は、脳内で比較的安定に生着し、脳腫瘍細胞に類似した遊走能を有するという利点があり、これをサイトカイン分泌の主体として応用することを検討した。しかしながら、安定した遺伝子導入株を作製することは困難であり、実際に臨床応用を考える場合、確実性の点で問題があると考えられた。本研究より、ラット脳腫瘍モデルに対するIL-2遺伝子を導入した不死化同種あるいは異種腫瘍細胞移植と皮下免疫の併用は有効な治療法であり、establishした脳腫瘍モデルの完全治癒を得ることも可能であることが示された。
|