研究概要 |
モヤモヤ病血管平滑筋細胞(SMC)はIL-1刺激に対し、対照SMCと比較し有意にCOX-2産生が亢進していた。これに伴い、モヤモヤSMCではPGE2が特異的に過剰産生された。IL-1刺激はMAPK、特にstress-activated MAPK(JNK, p38MAPK)を燐酸化し、この下流でCOX-2産生が刺激される。ERK1/2の抑制物質PD98059では、COX-2-PGE2産生は抑制されず、P38MAPK特異的阻害剤である、SB203580によりほとんど抑制された。JNKの燐酸化はモヤモヤ、対照SMCの間で差異が認めれなかったが、P38MAPKの燐酸化はモヤモヤSMCで有意に亢進していた。COX-2は血管新生因子の産生に関与していることが明らかにされている。また、モヤモヤ病では、血管新生による脳の側副血行路が発達している。こうした背景から、IL-1刺激によるモヤモヤSMCのVEGF産生を検討した。IL-1刺激により、モヤモヤSMCでは対照SMCの4倍に増加した。このVEGF産生はPD98059では抑制されず、SB203580,及びNS398によりほぼ完全に抑制された。またJNK阻害剤SP6000125では抑制されなかった。血管を構成する壁細胞、血管内皮、繊維芽細胞、平滑筋細胞のVEGF産生の制御を検討した。血管平滑筋細胞ではP38MAPK-COX-2にdependentでありJNKにindependentであったが、繊維芽細胞ではP38MAPK, JNKにdependentであり、COX-2 independentであった。血管内皮細胞はVEGFをほとんど産生しなかった。以上の結果により、モヤモヤ病での血管壁細胞の異常は血管平滑筋細胞に限定され、P38MAPK-COX-2 pathwayの過剰反応であることが明らかにされた。治療薬の効果の可能性を示唆する結果である。
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