研究概要 |
本研究は、種々の血管病態でその変化が報告されるheparin cofactor IIの存在に着目し、あわせて病変局所に起こる血液凝固・線溶系パラメータの変化、および病理組織所見の変化を総合的に検討し、頚動脈閉塞・高度狭窄の病態、形成機序の解明をはかることを目的とする。主たる研究成果は以下の3点であり、その概要を報告する。 1.頸動脈狭窄病変におけるchlamydia pneumoniae感染の病的意義 頸動脈狭窄形成の1因子としてchlamydia pneumoniae感染が注目されている。本研究のひとつのテーマとして、脳血管撮影を施行した524例を対象に、頸動脈狭窄の程度と血中のchlamydia pneumoniae IgG,IgAの相関につき検討を行った。結果はアテローム硬化の進行度とchlamydia pneumoniae感染の間には有意の相関は見られず、従来の報告とは異なる注目すべきものであった。(Atherosclerosis 163:165-168,2002に発表) 2.heparin cofactor IIの病態機序に関する検討 Heparin cofactor IIがトロンビンの抑制に関与する事実につき、in vitroの実験系で実証した(FEBS Letters 522:147-150,2002に発表)。頸動脈狭窄病変例のheparin cofactor IIの血中濃度および組織内分布の検討については、免疫抗体法および免疫組織染色法の方法について独自の工夫・改良を行い、アテローム血栓病変に興味深い知見を得ている。 3.各種病態における全血血小板凝集能の変化 頸動脈狭窄症などの各種臨床病態における、血小板凝集能の変化を測定した。脳硬塞後の服薬による抗血小板凝集能変化の個人差、血管撮影前後の全血血小板凝集能の変化、血管内治療におけるいくつかの知見を得た。特に血管内治療でヘパリンを使用した場合、全血血小板凝集能は亢進に傾くことを明らかにした。この事実は従来の報告にはなく、また通常の血管撮影では観察できなかった事象であり、臨床的にも検査・治療手技を行う上で重要な知見である。現在論文投稿中である。
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