研究概要 |
小脳の顆粒細胞由来の脳腫瘍である髄芽腫はWnt signalとHedgehog signalの異常によって発生することが判明したがその下流遺伝子群の詳細は未だ不明である。一方、近年ヒトゲノム計画の進展により、ヒトゲノムデータベースはほぼ完成しつつある。当初の予定では初年度よりマウスモデルを用いて解析を行う予定であったが、未完成なマウス等のモデル動物の遺伝子データベースより、より完全なヒト遺伝子データーベースを活用する方が有利と考え、初年度よりヒトの脳腫瘍を用いて解析を行った。 初年度:ヒト髄芽腫組織を用い、そのmRNAを抽出し、正常ヒト小脳組織との間でsubtractive hybridizationを行い、ライブラリーを作成した。さらにこのライブラリーをスクリーニングして、髄芽腫で特徴的に発現する遺伝子群の同定を行った。ライブラリー作成前に、腫瘍の特徴を調べるため、zic,Gli等を含めた様々な遺伝子の発現解析したところ、本腫瘍はWnt signalの異常が推測された。本ライブラリーをスクリーニングし、髄芽腫で特徴的に発現する遺伝子群を同定したところ、BARH1,ULIP,neuronatinなどの発生過程の小脳外胚細胞において発現する遺伝子群、ENC1,SOX4などのWnt signal下流遺伝子群、SAM68,CROPなどの腫瘍関連遺伝子群が同定された。現在ヒトcDNA arrayを用いて腫瘍に優位に発現している遺伝子群を解析し、subtractive cloningの結果と比較検討している。来年度はHedgehog signalに異常を持つ腫瘍を用いて同様の解析を行い、さらにマウスモデルとの比較検討も予定している。
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