カイニン酸海馬内投与にて、海馬顆粒細胞層の分散・肥大化が生じた際に神経の分化あるいは脱分化を惹起する物質が出現するのではないかと言う観点より研究を始め、昨年度には切片培養を施行したところ、細胞障害性の因子が含まれていることが推測された。microdyalysisにて細胞間液のグルタミン酸濃度を調べたところ、対照と比べ増加が認められた。この結果より、長期に及ぶグルタミン酸系の刺激が分散・肥大化に関与している可能性が示唆された。そこで今回は培養実験ではなく、in vivoにてこの形態変化に対するグルタミン酸系の関与について各種グルタミン酸アンタゴニストの投与にて検討した。 non-NMDA系のアンタゴニストにおいてはカイニン酸前に投与した場合には顆粒細胞の分散・肥大化に対し効果が認められたが、カイニン酸投与後では効果がなかった。一方、NMDA系のアンタゴニストにおいてはカイニン酸投与前には効果は認められなかったが、カイニン酸投与後数時間以内では顆粒細胞の分散、肥大化を抑制した。カイニン酸投与後24時間以後経過した後もNMDA系のアンタゴニストは肥大化・分散に対し、効果は認められたが、軽度であった。この結果より、この形態変化のトリッガーはnon-NMDA受容体の活性化によるが、その後の形態変化にはNMDA系がより密接に関係しているものと考えられた。しかし、慢性期の形態変化の進行にはグルタミン酸受容体刺激以外の要因があるものと推測された。 この慢性期の因子については以前より研究を行ってきたが、mRNA differential display法の研究結果より、その一つにはFlamigo1/Celsr2が関与することがわかり論文報告した。
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