マウス海馬にカイニン酸を投与することにより、投与後4日目頃より海馬顆粒細胞層の分散と顆粒細胞の肥大化、神経突起の伸張などが認められ、投与後8週目まで持続する。 このモデルを用い、神経分化に影響のある因子が得られないかと期待し研究を行った。 1、培養実験の結果:カイニン酸投与後1週目海馬蛋白抽出液と同時期の海馬細胞外液の採取を行った。2系統の培養でこれら抽出液の投与により神経細胞の形態変化が惹起されるかを検討した。マウス生後早期の海馬を切片培養した実験では、カイニン酸投与側海馬蛋白抽出液の投与により却って神経細胞変性を惹起する所見が認められた。神経幹細胞の培養系では蛋白抽出液の投与により神経細胞やグリアへの分化誘導に促進する所見は得られなかった。また、細胞外液が低濃度のためと推定されたが、人工髄液と何ら異なった所見は得られなかった。本来環境因子としては細胞外液の変化が重要であるが、高濃度で大量に得ることはマウスでは困難であり、異なった系統での検討が必要であろうと考えられた。 2、(1)の実験にて切片培養では蛋白抽出液に細胞障害性が認められた。この障害性因子にはグルタミン酸あるいはそれに関連する物質の関与が推測され、その過剰な活性化が顆粒細胞層の分散に関与する可能性が考えられたため、その拮抗薬による形態変化を調べ、NMDA受容体の活性化が分散現象を律速していることが推測された。現在、投稿中である。 3、前回の科研費のテーマとしてdifferential display法により分散・肥大化した海馬に過剰発現するmRNAの検討を行ったが、その結果、既知ではあったが過剰発現しているmRNA(Flamingo/Celsr2)が同定されBrain Res.に報告した。
|