非増殖性アデノウイルスベクターとしてマウスIL-4遺伝子を組み込んだAdCIL4、Tリンパ球活性化に必要なセカンドシグナルであるB7.1を産生するアデノウイルスベクター(AdB7)、β-galactosidase産生遺伝子を組み込んだAdRL、外来遺伝子を含まないAdOを用い、C3H/Heマウス由来悪性膠腫細胞RSV-MGに各ベクターを感染させた。AdRL感染細胞のβ-galactosidase発現はX-gal染色で、AdCIL4のIL-4産生能は培養上清液を用いたELISAで、B7.1の発現は免疫細胞染色にて確認した。AdCIL4、AdB7またはAdOを感染させたRSV-MG、および非感染RSV-MGをC3H/Heマウスの右被殻に定位的に移植し、AdCIL4感染腫瘍移植群、AdB7感染腫瘍移植群、AdO感染腫瘍移植群、非感染腫瘍移植群各群での生存曲線を求め、また免疫反応を免疫組織化学的に比較検討した。腫瘍移植実験では非感染腫瘍移植群、AdO感染腫瘍移植群に比べAdCIL4感染腫瘍移植群、AdB7感染腫瘍移植群では有意な延命効果を認めた。組織学的にはいずれの群においても腫瘍内部および周囲にマクロファージ浸潤がみられたが、AdCIL4感染腫瘍移植群、AdB7感染腫瘍移植群ではそれに加えてTリンパ球、特にCD8陽性細胞障害性Tリンパ球、CD25陽性活性化Tリンパ球の浸潤、さらにAdCIL4感染腫瘍移植群ではMHCクラスII抗原発現の増強を認めた。以上の結果よりIL-4、B7.1を発現するアデノウイルスベクターを悪性脳腫瘍に感染させることにより免疫学的排除機構活性化による発育抑制効果の可能性が示唆された。
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