研究概要 |
C6グリオーマモデルでの硼素化合物(BSH)投与から中性子照射までの至適時間の決定と細胞内局在についての検討 今回、現在臨床的に使用している硼素化合物(BSH : Na2B12H11SH)を経静脈的に投与した場合、投与から中性子照射までの至適時間の決定を行うためにC6ラットグリオーマモデルを用いて基礎実験を行った。 まず、5.0^*106個のC6グリオーマ細胞をラットの脳に定位的に移植し、モデルを作成した。次に、移植後2週間目に50mg/kgのBSHを尾静脈から投与した。BSHの投与後から1、4,8,16,24,48時間後にラット脳を摘出して組織中の硼素濃度を測定し、また抗BSH抗体を用いて硼素の組織内局在を免疫染色で検討した。 BSH投与後1時間目と8時間目の組織切片中の硼素濃度を測定した。切片をホルムアルデヒド処理、ホルマリン処理、ホルムアルデヒド+PBS処理した群で検討したがいずれの切片中も硼素が確認され、その定量解析でも未処理群と有意差はなかった。すなわち、免疫染色の処理過程で切片から硼素の流出はないと考えられた。そして次に先の時間毎に取り出したC6ラット脳腫瘍組織を抗BSH抗体で用いて免疫染色を行った。硼素は1時間後には既に細胞全体で認められたが、8-16時間後には比較的細胞の核に限局していた。48時間経過した時点でも、まだ硼素は細胞全体に存在していた。 以上の実験結果から、BSHは投与後早期から細胞質や細胞核といった腫瘍細胞内に取り込まれる。そして時間の経過に伴ってその多くが細胞核に至る。しばらく細胞内にとどまるものの次第に排泄されることが判明した。すなわち、今回の実験から硼素がより細胞核に限局して集まる8-16時間頃が中性子捕捉療法が最も効果が期待できる時間帯であると思われた。
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