研究概要 |
1)一過性脳虚血後のタウ因子燐酸化の変化 スナネズミ一過性前脳虚血モデルを用い海馬領域におけるタウ因子燐酸化の経時的変化を検討した。抗燐酸化抗体を用いたウエスタンブロット、免疫染色ともに遅発性神経細胞死を呈するCA1領域ではタウ因子の199/202セリンの燐酸化が亢進することが明らかとなった。これに対し396セリンでは明らかな変化を認めなかった。この199/202セリンの経時的変化は神経細胞死の見られないCA3領域では顕著ではなく、タウ因子の燐酸化の亢進は神経細胞死に特異的な変化であることが明らかとなった。 2)タウ燐酸化にかかわる酵素の検討 次にタウ因子の燐酸化にかかわる燐酸化・脱燐酸化酵素につき検討を行った。各酵素の特異的阻害剤を脳室内投与し199/202タウの燐酸化状態を検討したところ燐酸化酵素はMAP-kinase, CDK-5が虚血後活性化されたタウの燐酸化に、更に脱燐酸化酵素はカルシニューリンの活性低下がタウ199/202セリンの過剰燐酸化に関与していることが示唆された。 3)タウ過剰燐酸化の意義の検討 これらの過剰燐酸化タウの虚血性神経細胞死における役割を検討する目的で遺伝子改変タウ因子を作成した。199/202セリンをそれぞれ燐酸化・脱燐酸化フォームに改変した。さらにこの遺伝子改変タウ因子に細胞内移行性を獲得させるためにTAT-蛋白を融合させた。現在本蛋白質を精製し、培養細胞に投与し検討中である。今後はその細胞毒性を検討し、脳室内投与を行いタウ因子の199/202セリンの過剰燐酸化の神経細胞における役割を検討する予定である。
|