研究概要 |
鉄イオン脳内投与による外傷性てんかんモデルの研究から活性酸素種がてんかん焦点形成に関与することが明らかとなり,我々は活性酸素を消去すれば外傷性てんかん焦点の形成が予防できることを示した.本研究では,モデルラット作成にヘモグロビン(Hb)や赤血球を使用し,鉄イオン注入法よりより臨床病態に近いモデルを作成し,活性酸素消去剤の外傷性てんかん焦点形成予防効果を検討した. 1:研究概要 (1)雄Sprague-Dawleyラットの大脳皮質運動野内にHb溶液を5μl注入し,脳波に対する影響を検討した. (2)膜の流動性に対するHbの影響を検討するために,TEMPO,5-doxylstearic acid(5-DS),7-DS,12-DS,及び16-DSを使用した電子スピン共鳴法の基礎検討を行った. (3)スピントラップ法を使用してEPC-K1のヒドロキシルラジカル(・OH)消去活性を再検討した. 2:研究結果 (1)ラットに1.3ngのHbを投与すると,投与2日後までの脳波にはスパイク活動などの発作性脳波活動異常は認められなかったが明期の睡眠時間は増加していた.Hb投与3目後よりは紡錘突発波にスパイク活動が混在しはじめ,異常紡錘突発波の時間も20秒以上に延長し,ポリスパイク活動などの激しい発作性脳波活動も認められた.さらに,4ngのHbを投与量すると,投与2日後には明期の睡眠時間が増加し,異常紡錘突発波も認められた. (3)本研究で膜の流動性を検討するためには5-DSが最適であることが明らかとなった. (4)・OHは600μM以上の濃度のEPC-K1により確実に消去されることを確認した. (5)以上の結果,Hb注入により外傷性てんかんモデルを作成し得ること,また,その潜時が長いことからHbから鉄イオンが放出されてけいれん性脳波異常を来すことが示唆された.さらに,過酸化による膜の過酸化変化をその流動性を指標として検討する準備が整った.
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