研究概要 |
本年度の研究では,ヘモグロビン(Hb)を使用して,より臨床病態に近い外傷性てんかんモデルラットを作成し,活性酸素消去活性を持つメラトニンの外傷性てんかん焦点形成予防効果を検討した. 1:研究概要 (1)雄Sprague-Dawleyラットの大脳皮質運動野内にHb溶液を5μl注入(Fe量約150pmol,注入速度0.5μl/min)してモデルラットを作成した.モデルラットの飲水中にメラトニンを混入して投与することにより,メラトニンを50mg/kg/day投与し,脳波変化に対する影響を検討した. (2)電子スピン共鳴法によりけいれん発作時には海馬でアスコルビン酸ラジカル(・C)が増加することを見いだしたため,・C検出法の基礎検討を行った. 2:研究結果 (1)ラットに2.5μgのHbを投与すると,投与2日後までの脳波にはスパイク活動などの発作性脳波活動異常は認められなかった.Hb投与7日後よりは紡錘突発波にスパイク活動が混在し始め,約90%のラットには1ヶ月後より紡錘波状の群発する7Hzの陽性棘波が認められ,この棘波に一致してラット口周の触毛にtwitchingが認められた.この変化は3ヶ月後にも継続していた (2)メラトニンの投与により摂食量,飲水量,体重変化に差は認められなかった.また,脳波や行動の変化は約80%のラットで認められた. (3)従来の・C測定法ではDMPO(25,000円/lml)を使用していたが,DMSO(1,500円/500ml)を使用する新しい方法を確立した. (4)以上の結果,メラトニンでは外傷性てんかん発症を予防することは困難なことが明らかとなった.また,・Cの新測定法を開発し海馬の酸化還元状態とけいれんとの関連を検討する準備が整った.
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