1)臨床例での検討:臨床例では現在まで計31例の頭蓋内動脈にステント留置を行った。閉塞例に対してPTA/stentを行った3例では1例が再閉塞を来し、他の2例は再狭窄を来した。再狭窄の2例はPTAで再拡張できた。また、MRI (diffsuion image)で血栓塞栓による異常信号の出現の有無を調べているが、穿通枝領域や他の部位での異常信号の出現は認められていない。海綿静脈洞部の頸動脈狭窄症の1例で血管破裂により内頸動脈海綿静脈洞瘻を来したが、頚静脈的に瘻孔部の閉鎖を行った。長期の経過観察では1例で再狭窄、1例で完全閉塞を来したが、新たな神経脱落症状を呈したものはない。残り29例では拡張は良好であり、新たなステント留置血管領域の脳虚血症状を認めていないことより、頭蓋内ステントは有効な治療法を考えられる。 2)静脈カバードステント:ステント2枚の間に自家静脈片を挟み込み、カバードステントを作成し、ブタ3頭の頸動脈に埋め込み実験を行った。コントロールは、静脈片のない2枚重ねのステントとし、埋め込み2ヶ月後に血管撮影を行った後、ステントを摘出し、組織学的変化を調べた。血管撮影ではカバードステント、コントロール群とも開存を認めたが、内膜肥厚はカバードステントの方が強かった。組織学的にはカバードステントで頸動脈の側枝は完全に閉塞されていたが、コントロールのダブルステントでは側枝は開存したままであった。以上より、静脈片を用いたカバードステントは若干の内膜肥厚はくるものの、分岐する血管や動脈瘤などの閉塞には有効と考えられた。
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