<目的>本研究課題の目的は神経移植治療応用を念頭においた多分化能を有する神経幹細胞(または神経前駆細胞)の細胞生物学的特徴の解析である。平成14年度は平成13年度に引き続いて主に培養実験で成熟脳もしくは胎仔脳から分離増殖させた神経幹細胞からパーキンソン病に対する移植治療のドナーとなるドーパミン細胞への分化手段を模索し、最も移植治療に適した方法を決定する。 <方法>ラット成熟脳または胎仔脳から神経幹細胞を分離培養し、同細胞をサイトカイン(IL-1、Sonic hedgehogなど)または神経栄養因子(FGF、BDNF、GDNFなど)で処置することにより分化誘導が効率に行えるかどうかを検討した。評価方法として(1)MAP-2、β-Tubulinなどのニューロンマーカーに加えて、ドーパミン細胞ニューロンのマーカーであるTyrosine hydroxylase、dopamine transporterなどの免疫染色を行う形態学的評価と(2)培養液中に放出されるドーパミンを測定する生化学的評価を行つた。 <結果および結論>検討したサイトカインの中ではSonic hedgehogが神経幹細胞から最も多くのTH陽性細胞を産出させることができた。しかし、dopamine transporter陽性細胞や培養液中に放出されるドーパミン量は少なく、TH陽性細胞には相当数のセロトニン細胞が含まれていると考えられた。今後、Sonic hedgehogとともにgrowth factorなどの因子を加えることにより、ドーパミン細胞数を増やす方策について検討する予定である。
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