研究概要 |
我々は、脳虚血後の脳組織における神経膠細胞の水分子の移動(細胞性浮腫)を細胞内Na^+イオンやK^+イオンの動態とともに経時的に測定することによって、水の細胞内への移動がNa^+イオンに先立って脳虚血後早期(34±8秒)に発生する事を証明し報告してきた。この水分子の移動には神経膠細胞のfoot processに存在する水チャネルであるaquaporin4が関与する事が考えられる。我々はaquaporin4がprotein kinase Cを介する燐酸化によって閉鎖する事実から、protein kinase Cの活性化物質であるphorbol estelを投与する事によって脳における細胞性浮腫抑制が可能である事を検討した。 麻酔下のラットの脳脊髄液中にphorbal 12,13-dibutylate等のphorbol estel類を投与し、全脳虚血及び水中毒モデルを用いて細胞性浮腫を発生させ、細胞内への水分子の移動は脳組織インピーダンスを測定する事によって細胞性浮腫の発生をモニターした。 しかしながらphorbol estel類は脳脊髄液中に投与しても神経膠細胞に達せず何ら効果を認めない事が判明した。そこでphorbol estel類をmicro dialysis法によって直接脳組織に投与したところ、細胞性浮腫の発生を抑制する事が可能である事が判明した。現在、投与量等を変えて検討中であるとともに、細胞性浮腫抑制効果がミトコンドリア機能を始めとする細胞内小器官にどの様に影響するかも検討中である。 又、今後はaquaporin4 DNAやanti-sence DNAを培養した神経細胞や神経膠細胞に導入する事によって、人為的に細胞膜上のaquaporin4の数を調節する事によって細胞性浮腫の抑制するなどの新しい治療法の開発を予定している。
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