研究概要 |
9週齢雄ヌードラットF344/Njcl-rnuの右基底核に、fast blueで蛍光標識をしたヒトグリオーマ株細胞U87MG 5X10^5個を定位的に移植した。一群には5日及び10日目に移植部位にhepatocytic growth factor(HGF)を定位的に注入し、他群はコントロールとした。移植2~3週間後に摘出した脳を固定し10μmの凍結切片としてHE染色した後、蛍光顕微鏡下で標識細胞を観察し、両群を比較した。その結果、これまでの我々の実験で比較的限局性に発育すると考えられたU87MGが、HGFの存在下で周囲脳に浸潤する形で増殖しており、HGFがグリオーマ細胞の浸潤に強く関与していることが示唆された。しかし、浸潤能を評価するための定量化には切片作成の工夫などがさらに必要と思われた。 1998年5月より2001年10月までの間に画像上多発性(多中心)の膠芽腫を4例経験した。この4例と同時期の孤発性膠芽腫5例に対して、免疫組織学的にMIB-1 sataining index(MIB-1SI), P53, GFAP, fibronectinの染色を行い、生存期間とともに比較検討を行った。その結果、MIB-1SI, P53, GFAP, fibronectinそれぞれに高低あるいは強弱を認めたが、GFAPの発現が多発例で低い傾向はあるものの、孤発例と多発例との間に今回検討したマーカーには有意な差は認められなかった(表1)。したがって、ヒトグリオーマにおける浸潤能にはこれらとは異なる因子が関与していると考えられ、浸潤能評価のためには、今後、MMP-2,VEGFなどさらに多くのマーカーについて検討を加える必要があると考えられた。
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