研究概要 |
1.背景と目的 急性虚血性脳卒中発症時の第一選択治療法は、発症3時間以内の超急性期血栓溶解剤投与療法である。本研究では血栓溶解を加速させるために次の点を具体的な目標とした。 (1)含気製剤と超音波併用による血栓破砕力の増強の確認 (2)含気製剤を破裂させる衝撃力を増す低周波超音波発生装置の設計・製作 (3)家兎股動脈塞栓モデルの完成 (4)in vivo実験による含気製剤及び超音波複合作用の確認 2.方法 含気製剤は超音波造影剤として臨床使用されているLevobist(シェーリング(株))を静注。周波数200kHz〜1MHz,出力0.1W/cm^2〜3.0W/cm^2が選択可能な動物実験用5φ超音波プローブを製作。家兎股動脈を用いたトロンビン血栓塞栓モデルを形成。血栓溶解剤はmonteplaseを静注。超音波照射はヒト側頭骨を介して施行。実験はt-PA単独群,超音波併用群,含気製剤追加群で比較。 3.結果 (1)家兎股動脈塞栓モデルの作成に成功した。 (2)t-PA単独群に比し超音波併用群は血管開存率で4〜5倍の増高があり、その血流量回復率も60%を超えた。 (3)超音波併用群と含気製剤追加群との間に有意差は無かった。 4.考察 超音波併用血栓溶解療法の有効性を家兎股動脈塞栓モデルにて示すことはできた。しかし、含気製剤を追加しても有意な有効性の向上は認められなかった。その理由として含気製剤の生体内での寿命が3〜5分と短いこと、完全塞栓モデルでは塞栓部上流まで気泡が到達し難い可能性もあることなどが考えられた。そのため動注法など新治療方式の開発が必要になるものと考えられた。 5.結語 静注した含気製剤と血栓溶解剤、そして超音波照射の三位一体効果はと血栓溶解剤と超音波照射との併用法以上の結果は得られなかった。血栓近傍への微小気泡の誘導方法が必要になると考えられた。
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