研究概要 |
目的:動脈硬化を伴った攣縮血管に血管平滑筋の増殖を抑制する遺伝子組み換えウイルスを投与して、その抑制効果を検討した。 方法:Kurosawa and Kusanagi-hypercholesterolemicウサギの右総頚動脈周囲に血液を充満させ血管攣縮モデルを作成した。さらに血管平滑筋に特異的な遺伝子プロモーターで、このICP4遺伝子を発現するtransgeneをthymidine kinase locusを分断する形で導入し、増殖期の血管平滑筋のみで複製破壊をきたす単純ヘルペスウイルス(HSV) d12CALPを作成した。投与方法は血腫作成Day 0,1,2に血管内にウイルス(1×10^9 pfu/ml)を注入し15分間感染させた。それぞれの群を血腫作成7日目に灌流固定を行い、X-gal染色でウイルスの血管壁への感染の有無を組織学的に検討した。さらに血管内腔面積および内・中膜の厚さを測定し、反対側正常血管と比較した。 結果:ウイルス投与をDay0および1に行った群では(それぞれn=5)、X-gal染色で染まる細胞は存在せず、ウイルスの感染は認めなかった。しかしDay2に投与した群では(n=5)、全例において陽性細胞を血管中外膜層に認めた。血管内腔面積はすべての群において血管内腔の縮小を認めず、ウイルスに感染したDay2群において有意な血管拡張傾向を示した(P<0.01)。 考察:HSV d12CALPの感染は増殖した平滑筋細胞に起こることから、血腫作成2日後より内頚動脈平滑筋の増殖が活発となっていると考えられた。ウイルスが感染した群で血管内腔面積が他の群より拡大していたことより、平滑筋の増殖が血管攣縮に関与しており、その時期にウイルスを投与し血管増殖を抑制することが、血管攣縮の新しい治療法と成り得るのではないかと思われた。
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