研究概要 |
1.方法 (1)雌成熟日本白色家兎64羽を以下の各16羽4群に分け右膝蓋腱に外科的処置を行い,術後3および6週で各群とも8羽ずつ屠殺し,5羽を力学的試験へ3羽を組織学的観察へ供した. (2)I群:凍結処理後,「半透被膜処理」を加えて外来性細胞の侵入を阻止した.この腱の中は術後6週間にわたって内在性線維芽細胞のみが存在し,生理的負荷が加えられた. (3)II群:凍結処理法を用いて内在性線維芽細胞を死滅させた後,両縁を切除して中央2/3を残す(area micrometerを用いた断面積計測により断面積を切除前の67%とした).そして「半透被膜処理」を加えた.この腱の中は術後6週間にわたって無細胞の状態が維持され,腱には正常の150%の過負荷が加えられた. (4)III群:右膝蓋腱に対して凍結処理を加えずに「半透被膜処理」のみを加え,外来性細胞の侵入を阻止した.この腱の中は術後6週間にわたって内在性線維芽細胞のみが存在し,生理的負荷が加えられた. (5)IV群:右膝蓋腱に対して両縁を切除して断面積を切除前の67%とした後,「半透被膜処理」を加えた.この腱の中は術後6週間にわたって内在性線維芽細胞のみが存在し,腱には正常の150%の過負荷が加わった. 2.結果 (1)I,III,IV群の弾性係数は正常膝蓋腱との間に有意差はないものの,II群は6週では正常膝蓋腱に比較し有意に低下した. (2)組織学的にはII群の膝蓋腱のコラゲン線維配列は不規則であるのに対し,IV群では細胞数の増加を認めたが,コラゲン線維配列は規則であった. 3.結論:以上の結果より過負荷が無細胞の環境下で膝蓋腱マトリクスの力学的特性を低下させるものの,この効果に対して内在性線維芽細胞はその力学的劣化を抑止することが明らかとなった.
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