研究概要 |
1.方法 (1)雌成熟日本白色家兎48羽を以下の各16羽3群に分け右膝蓋腱に外科的処置を行ない,術後3および6週で各群とも8羽ずつ屠殺し,5羽を力学的試験へ3羽を組織学的観察へ供した。なお,外科的処置を施さない左膝蓋腱を正常対照とした。 (2)I群:凍結処理にて膝蓋腱の内在性線維芽細胞を死滅させた後,外来性細胞の浸潤を許し,外固定を施さずに膝蓋腱に生理的負荷を加えた。 (3)II群:凍結処理法を用いて内在性線維芽細胞を死滅させた後,両縁を切除して中央2/3を残し(area micrometerを用いた断面積計測により断面積を切除前の67%とした),膝蓋腱に正常の150%の過負荷が加わるようにした。 (4)III群:凍結処理法を用いて内在性線維芽細胞を死滅させた後,両縁を切除して中央1/2を残し(area micrometerを用いた断面積計測により断面積を切除前の50%とした),膝蓋腱に正常の200%の過負荷が加わるようにした。 2.結果 (1)I, II, III群の膝蓋腱の弾性係数は経時的に低下し,正常膝蓋腱に比し低値を示した。3群間の比較では,3週では有意の群間差は認められないものの,6週においてIII群の膝蓋腱の弾性係数はI, II群の膝蓋腱に比し低値であった。一方,I群およびII群の間には有意の差は認められなかった。 (2)組織学的にはII群の膝蓋腱における外来性細胞浸潤はI群に比し軽度であった。III群の膝蓋腱のコラゲン線維配列はI群およびII群の膝蓋腱に比し不規則であった。 3.結論:外来性浸潤細胞が主体の壊死後膝蓋腱に対して過負荷は経時的に力学的劣化をもたらすこと,そして過負荷は細胞浸潤を抑制することより,過負荷の壊死後膝蓋腱への効果は浸潤細胞を介する影響は小さく主に細胞外マトリックスに直接的に働く効果が大であることが示唆された。
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