研究概要 |
現在,脊椎固定材料には金属材料が使用されているが,金属材料による固定の結果の高すぎる剛性が隣接の非固定椎間にもたらす様々な弊害が問題となっている.当該研究は、不安定脊柱に即時安定性を与え、しかも骨癒合成立時には生理的骨組織の剛性を持つ脊柱の再建を目指すものである。非荷重部や関節内での骨折治療を中心に、臨床応用されている吸収性骨接合材ポリ-L-乳酸骨接合材(以下PLLA)を素材とする脊椎固定器具を作成し,その力学的特性と脊椎固定術に応用した際の生体内でのPLLAの変化と動態特性、移植骨の骨癒合過程とその力学的特性を評価することにある。本年度は実験用(成羊腰椎用)の椎体間置換材料(ボックス型ケージ)を設計し,作製した.ボックス型ケージは比較実験を行う既成のカーボンケージと同形状とした.さらに作成したケージの力学的強度試験を行い,圧縮荷重に十分耐えることを確認した. ついで成羊を用い腰椎用PLLAケージで腰椎の椎間板を置換するIn vivoの実験を開始した.実験は腰椎の正側X線撮影後,全身麻酔下で腰椎に後方から進入し,腰椎の後方を横突起まで展開して椎間関節と椎間板を切除してmotion segmentを不安定化する.ついで成羊腰椎用ケージで椎間板置換し,椎弓根スクリュー固定するものである。腰椎の後側方から左右各一個のケージを挿入して椎間板置換を行った.対照として腸骨稜と現在臨床的に使用されているカーボンケージによる椎間板置換固定の2グループを作った.両ケージの中空部分には腸骨片を詰めた.初期固定性獲得のため椎弓根スクリュー固定により椎間固定した.今後,検体数を増やし、移植骨塊の経時的な組織学、力学的特性の推移を検討し、PLLAケージの椎体間固定に及ぼす影響を明らかにする予定である。
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