研究概要 |
本研究の目的は、リウマチの関節破壊に関与すると思われる関節滑膜細胞(RA-SF)における細胞膜表在型v-ATPaseの発現強度と臨床症状との関連、そしてsplice variant formの意義について調べることであった。昨年の研究によって細胞表在型v-ATPaseのmRNA発現は、RA-SFより弛みの生じた人工関節骨破壊部付近から採取した線維芽細胞(Prosthesis loosening fibroblast : PLF)において最も強く発現していることが分かった。 本年は細胞表在型v-ATPase mRNAの発現調節機構について検討した。RA-SFを培養後、2つに分割し、一方に炎症性サイトカインであるIL-1,IL-6,(1000pM)を加え6時間培養した後、v-ATPase B1 subunit mRNAの発現量をTaqman systemを用いて測定した。同様にに培養液のpHが与える影響を検討するために、乳酸を用いて培養液のpHをpH6,pH5に調節し、24時間培養後のv-ATPase B1 subunitのmRNA発現量も調べた。 炎症性サイトカインはv-ATPase mRNA発現に影響を与えなかった。一方、酸性培養液は細胞表在型v-ATPase B1 subunitの発現を増強した。通常培養液と比べてpH6培養液では約4倍、pH5では566倍にmRNA発現量を増加させた。 以上の結果から、滑膜線維芽細胞における細胞表在型v-ATPaseの発現は、炎症性サイトカインによる調節ではなく、細胞周囲のpHによって調節されていることが示唆された。
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