研究概要 |
cDNAマイクロアレイを用いてマウス脛骨骨折治癒過程での遺伝子発現を解析した。10週令の雄C57BL/6マウスを用い、ネンブタール腹腔内麻酔下、髄内釘刺入後、脛骨骨幹部に閉鎖性横骨折を作成した。骨折後3,7,10,14日目に骨折仮骨を採取し、TRIZOL法にてtotal RNAを抽出した。コントロールとして、同マウスの非骨折大腿骨骨幹部からtotal RNAを抽出した。骨折後3日目の仮骨のtotal RNAからpolyA-RNAを調整し、逆転写反応によりプローブcDNAを作成した。これをマウスfetus cDNAライブラリーから作成したcDNAマイクロアレイ(2304クローン)にハイブリダイズさせた。その結果、6つの遺伝子の発現量が骨折仮骨で2倍以上増加しており、逆に11の遺伝子の発現量が50%以下に低下していた。発現上昇が見られた6つの遺伝子のうちSPARC, biglycan, dercorinは、これまでの報告で、骨折仮骨における発現増加がすでに確認されていた。一方、残りの3つの遺伝子periostin, calumenin, FHL-1 については、これまでに骨折仮骨での発現の報告がなく、今回の検討で始めて明らかにされたものであった。発現量増加の見られた6つの遺伝子について、RT-PCR法により発現量の相違の確認実験を行い、いずれの遺伝子も発現が増加していることを確認した。cDNAマイクロアレイにて最も発現量増加が多かったperiostinについて、Northern blotting, in situ hybridizationにより、骨折治癒過程における時間的空間的発現を検討した。その結果、骨折後3から7日目の未分化な間葉系細胞および骨膜細胞でperiostin遺伝子の強い発現を認め、骨折後14日目には、その発現が急速に低下することが明らかとなった。
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