レトロウイルスベクターであるPMX-IRES-GFPを用いたATDC5へのHAS2遺伝子導入を施行し、その感染効率をベクターの中に組み込まれたGFPの蛍光発色を利用したFACSにて測定した。さらに、cell sortingによって、HAS2陽性細胞を高率に回収した。さらにRT-PCRを用いてATDC5におけるHAS2mRNAの発現を確認した。そこで、HAS2遺伝子導入群と非導入群のATDC5において細胞周囲に合成されたHAをb-HABPと蛍光色素Cy3を用いた細胞免疫染色にて、培養上清中のHA濃度を高速液体クロマトグラフィーにて比較検討し、HAS2遺伝子導入されたHA合成量の評価をした。FACSによる感染効率は、cell sortingを施行後、HAS2導入群は約30%に上昇した。これを用いて、HAの合成量の評価を施行したところ。HAS2遺伝子導入群と非導入群において、明らかに視覚的に細胞周囲に合成されたHA量に差が認められた。さらに培養液中のHA濃度を培養開始後21日目まで測定したところ、HAS2遺伝子導入群では非導入群と比べ、安定してHAを合成していることが認められた。レトロウイルスベクターを用いたHAS2遺伝子導入はその、ゲノムDNA中に遺伝子が取り込まれるという特徴から持続的な発現が期待される。今回の結果よりHA合成能がup regulateすることが軟骨分化全段階を通して認められた。以上から恒常的なHA合成が期待できると考えられ、自家軟骨細胞培養移植の際にこの手技を用いる事でよりよい安定した硝子様軟骨の再生が期待できる。
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