研究概要 |
長期臥床による骨萎縮を防止することが適切な負荷をかけることで実現可能と推定されるが,その負荷の大きさと負荷時間について検討することが本研究の最終目標である.平成13年度は、まず重力負荷を除去した状態で起きる病態変化をin vitroで確認する作業を実施した。ラット脛骨骨髄より採取した骨芽細胞を、4日間重力負荷除去条件で培養した。培地を活性型ビタミンD3添加培地に交換し、さらに24時間培養した後、グアニジン液で固定し、常法にしたがいRNAを精製した。高感度定量的RT+PCR法により、ビタミンDレセプター、グルココルチコイドレセプター、オステオカルシン、アルカリフォスファターゼの各遺伝子mRNの発現量を求めた。重力負荷除去にともなって、ビタミンDレセプターの発現が半減するとともにオステオカルシン発現が、遺伝子およびタンパク産生量の両レベルで、50から90%も激減することがわかった。またアルカリフォスアファターゼの発現も有意に低下することがわかった。これとは逆に、活性型ビタミンD3が存在しない条件では、これらの変化が全く見られなかったこと、そしてオステオカルシン遺伝子の上流プロモータにはビタミンD応答性領域があり、ビタミンDによる発現誘導性が強いことが知られている。すなわち重力負荷除去にともなう骨代謝マーカーであるオステオカルシン産生低下は、ビタミンDレセプター発現の変化を介したビタミンD作用の阻害を介していることが示唆された。またグルココルチコイドレセプターの発現は5から10倍と著しく上昇した。次年度では、計画通り、高重力による力学負荷をかけた状態で骨芽細胞を培養することにより,力学負荷の大きさと骨芽細胞レベルでの骨形成マーカーの変化を定量的に解析し、有効最小重力負荷量および有効最小重力負荷時間を求める予定である。
|