研究概要 |
核内転写因子Peroxisome proliferator activated α(PPARα)を介した抗炎症作用に注目し、そのリガンドであるフィブラート系薬剤を用いた実験を行った。 1)マウスAAアミロイドモデルにおいてフェノフィブラートは脾臓アミロイド沈着及び経血清アミロイドA(SAA)濃度を有意に抑制した。 2)フェノフィブリン酸は肝細胞HepG2におけるサイトカイン刺激によるSAA産生を抑制した。 3)フェノフィブリン酸はマクロファージ系細胞RAW264における炎症刺激によるIL-1β,IL-6産生を抑制した。 4)RT-PCRによりマクロファージにおけるPPARαの発現は認めなかった。更にSAAやIL-1β,IL-6などの蛋白の遺伝子上にはPPAR結合領域(PPRE)の存在は確認できなかった。 5)肝細胞からのSAA産生あるいはマクロファージからのサイトカイン産生時にnuclear factor κB(NF-κB)活性が上昇し、フィブリン酸の添加によりNF-κB活性が抑制された。 6)ラットアジュバント関節炎モデルに対しフェノフィブラートの投与を行ったが、明らかな抑制効果を認めなかった。また、ヒトRA滑膜細胞中にPPARαの発現を認めなかった。 (総括)フェノフィブラートはマウスアミロイドモデルにおいて血中SAA上昇を抑制し、組織アミロイド沈着を強力に抑制することが確認された。さらに、in vitroではSAAのみでなくIL-1βやIL-6をも抑制し、その作用機序はPPARα活性化に伴うNF-κBの抑制などのシグナル伝達の関与が推測された。
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