研究概要 |
脊椎悪性腫瘍に対する脊椎全摘術において血管に富む腫瘍の場合,しばしば多量の出血をきたす.頭尾側隣接レベルを含めた脊椎分切動脈の結紮によって術中出血量を減少させることが可能と考え,本研究では複数レベルの脊椎分節動脈結紮が椎俸血流に及ぼす影響を観察した.電気分解式水素クリアランス法を用いて成犬の椎体血流量を測定した.A群ではT12,13,11の順に両側の脊椎分節動脈を結紮した.各レベルの結紮毎にT12椎体内血流を測走した.B群ではT12,11,13の順に結紮し,同様にT12椎体内血流を測定した.A群においてT12椎体内血流は,T12の結紮後ではコントロールの71.7±8.4%(p<0.05),T12,13の2椎骨レベルの結紮後では49.5±5.5%(p<0.05),T12,13,11の3椎骨レベルの結紮後では28.0±8.5%(p<0.05)と有意に低下した.またB群においてもT12椎体内血流は,T12の結紮後ではコントロールの68.6±3.7%(p<0.05),T12と11の2椎骨レベルの結紮後では49.5±5.5%(p<0.05),T12,11,13の3椎骨レベルの結紮後では20.3±6.6%(p<0.05)と有毒に低下した.両群間に有意差はなかった.微小血管造影でT12単独レベルや2椎骨レベルの結紮では,T12の分節動脈は逆行性に描出された.しかしT11-13の3椎骨レベルの結紮ではT12の分節動脈の描出は淡くなった.血管造影の後各標本の椎体前面や脊柱管,椎体内の動脈を観察するとT12単独レベルや2椎骨レベルの結紮では,T12椎体内や周囲の微小動脈血管を多数認めたが,3椎骨レベルの結紮では微小動脈血管は有意に少なかった.本研究の結果,一椎骨とその頭尾側隣接椎骨の合計3椎骨の脊椎分節動脈を結紮することでその椎体内の血流は著しく減少することが判明した.
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