本研究は、末梢神経損傷時の非侵襲的な画像診断法の開発を最終目的とし、その一助として動物の神経損傷モデルを用いた基礎的な実験を行う。今年度は、ウサギやラットを用いた坐骨神経圧挫モデルを作製し、神経の再生と血液-神経関門機能動態を調べるため、主に免疫組織学的手法により検討した。 【方法】 動物はラットおよび白色家兎を用い、坐骨神経の圧挫モデルを作製し経時的に坐骨神経を採取した。坐骨神経を、圧挫部およびその近位、遠位部分に分け、凍結切片を作製し以下の実験を行った。 1.血液-神経関門破綻の指標としてEvans blue albuminを経静脈的に投与し、蛍光顕微鏡にてその漏出像を観察した。 2.神経変性および再生を観察するため、Neurofilament(NF)、Myelin basic protein(MBP)、S-100 proteinに対する抗体を用いた免疫組織化学染色を行った。 3.ラット坐骨神経の連続切片にて、血管内皮細胞マーカーとしてRECA-1を、血液関門因子マーカーとしてEBAおよびGLUT-1を用いたEvans blue albuminとの二重染色を行い、血液-神経関門機能動態を詳細に検索した。 【結果】 坐骨神経圧挫後、圧挫部および遠位部では、7日目をピークとしたEvans blue albuminの漏出像を認めた。ラット切片を用いた血液-神経関門機能検索では、正常神経では全ての血管内皮にEBA強陽性となるのに対して、圧挫部および遠位部では、圧挫後7日目をピークとしてその陽性度および陽性率が一過性に低くなった。3週では神経の再生も認められ、血液-神経関門機能もほぼ回復していた。 【まとめ】 以上より、末梢神経の変性および再生と血液-神経関門機能が相関していることが推測された。
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