研究概要 |
【目的】1)神経損傷後、損傷部の近位、遠位部分の血液-神経関門の破綻の有無、その範囲および経時的変化を明らかにする。 2)神経再生と血液-神経関門との関係を明らかにする。 【方法】ラットを用い、坐骨神経を坐骨結節部で血管クリップにて5分間圧迫して圧挫モデルを作製し、損傷後1,3日,1,2,3,4,8週に坐骨神経を圧挫部およびその中枢10mmから末梢35mmまで採取した。それを5mmごとに分け、凍結横断切片を作製した。 1)血液-神経関門破綻の評価としてEvans blue albuminを経静脈的に投与し、蛍光顕微鏡にてその漏出像を観察した。 2)坐骨神経の連続切片にて、血管内皮細胞マーカーとして抗RECA-1抗体を、血液関門因子マーカーとして抗EBA抗体および抗GLUT-1抗体を用い、免疫組織化学的手法を用いて血液-神経関門機能動態を定量的に検索した。 3)神経変性および再生を観察するため、抗Neurofilament抗体を用いて免疫組織化学染色を行った。 【結果】1)損傷後1日目より圧挫部より末梢全ての部分で一斉にEvans blue albuminの漏出像を認め、1週目がピークとなり2〜3週の間に漏出像は見られなくなった。 2)抗RECA-1抗体では損傷後もコントロールと同様に抗原性は保たれていた。一方、抗EBA抗体はコントロールでは全ての血管内皮で強陽性となるのに対し、損傷後3日では圧挫部より中枢5mmおよび末梢側全ての部分でその陽性度および陽性率が有意に低下し、血液-神経関門が破綻していた。損傷後3週より圧挫部より徐々に陽性率が回復しており、それを定量的に評価できた。 3)抗neurofilament抗体を用いた軸索染色では軸索の変性は損傷後3日より起こり、再生軸索は損傷後2週よりみられ、血液-神経関門は神経の再生に引き続いて回復していた。
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