本研究の目的は関節軟骨欠損に対する軟骨細胞三次元培養における新しい吸収性培養細胞包埋材料としてキチンを使用し、その有用性を検討することである。 2kgの幼若日本白色家兎の軟骨を採取。酵素処理し、軟骨細胞に単離後、1%のα-キチンを凍結乾燥して作成したスポンジ内に包埋し培養した。キチンへの軟骨細胞の接着性は良好でキチンスポンジ内で軟骨細胞の培養は可能であった。これを、経時的にトルイジンブルー染色、アルシアンブルー染色、サフラニン0染色および、typeIIコラーゲン抗体を用いた免疫染色を行い、軟骨細胞が形質を維持し硝子軟骨様組織の形成を確認した。走査電子顕微鏡でもコラーゲン線維内の軟骨細胞像を観察した。今後、RT-PCRによりtypeIIコラーゲン、アグリカンのmRNAの発現を観察し、HPLC法をもちいて、コンドロイチン硫酸、コラーゲン架橋物質を定量する。その後、日本白色家兎の関節軟骨に欠損を作成し、軟骨細胞培養したα-キチンスポンジを移植し、in vivoでの変化を観察する。比較のために、現在、報告されているコラーゲンゲル包埋軟骨細胞培養でのコンドロイチン硫酸量、コラーゲン架橋物質量をHPLC法にて測定した。コラーゲン架橋物質であるピリジノリンはコラーゲンあたりの量として計算し、typeIIコラーゲンの産生とともに増加したが、実際の軟骨と比較するとその量はかなり少なかった。その結果については第15回日本軟骨代謝学会にて報告した。
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