【目的】 先制的な交感神経ブロックが複合性局所疼痛症候群、Complex Regional Pain Syndrome(CRPS)の痛みを予防しうるかどうかを動物実験で確かめるために、CRPS病態の交感神経依存性について、病態時期や動物の系統による違いがあるかどうかを調べた。 【方法】 1、坐骨神経損傷ラットを作製し、右頚静脈留置カテーテルより連日採血を行い、血中ノルアドレナリンの定量を高速液体クロマトグラフィー法で測定した。シャム手術のラットを対照群とし、経日変動を比較した。 2、Sprague-Dawley(SD)系とLewis系ラットを用い、アジュバント投与による慢性炎症ラットを作製した。伏在神経-皮膚標本を用い、皮膚痛覚線維活動に対するノルアドレナリン投与の興奮作用における両系統ラットの違いを調べた。 【結果と結論】 1、CRPS Type IIモデル動物(坐骨神経損傷ラット)の血中ノルアドレナリン量は病初期(術後5-6日)に最高値を示すが、7日以後は健常ラットと同程度まで低下した。よって、交感神経の活動は病期によってかなり変動することが明らかとなった。交感神経ブロックの効果のばらつきは、病期による交感神経依存性の違いによる可能性が示唆された。 2、CRPS Type Iモデル動物(慢性炎症ラット)の痛覚線維活動に対するノルアドレナリンの興奮作用は、SD系よりもLewis系で強く現れ、明らかな系統差がみられた。交感神経ブロックの効果のばらつきは、個体間の交感神経依存性の違いによる可能性が示唆された。
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