【目的】 先制的な交感神経ブロックが複合性局所疼痛症候群、Complex Regional Pain Syndrome (CRPS)の痛みを予防しうるかどうかを動物実験で確かめること、また、CRPSの痛みに対する交感神経ブロックの治療効果の不安定さの原因を明らかにすることを目的とした。そのために、CRPS宿態の交感神経依存性について、病態時期や動物の系統による違いがあるかどうかを調べた。また、末梢機構の多様性を探るため、痛覚線誰活動に対する交感神経伝達物質ATPの作用の詳細を調べた。さらに、CRPS Type I関連疾患である糖尿病性ニューロパチーにおける末梢機構を明らかにした。 【結果と結論】 1、先制的交感神経ブロックは炎症モデル動物の足部の炎症発生を抑制したが、痛覚線維活動に対するノルアドレナリンの興奮作用は抑制しなかった。CRPS Type Iの発生機構における末梢機序の複雑さが明らかとなった。 2.CRPS Type IIモデル動物の血中ノルアドレナリン量は病期によってかなり変動することが明らかとなった。交感神経ブロックの効果のばらつきは、満期による交感神経依存性の違いによる可能性が示唆された。 3、炎症モデル動物の痛覚線維活動に対するATPの作用は、低濃度では抑制的に高濃度では促進的であることが分かった。交感神経依存性の疼痛発現にはATP単独では寄与していない可能性が高いことが明らかとなった。 4.CRPS Type Iモデル動物の痛覚線維活動に対するノルアドレナリンの興奮作用には明らかな系統差がみられた。交感神経ブロックの効果のばらつきは、個体間の交感神経依存性の違いによる可能性が示唆された。
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