生体活性材料は人工骨として臨床に広く応用されているが、その骨形成能力は自家骨に劣る。今回の研究では、人工骨に成長因子を付加して、自家骨に匹敵するような骨形成能を持つ人工骨を作成することを目的とした。 1:TAK-778による骨結合能の増強 TAK-778は新しく合成された低分子化合物であり、ラット骨髄間質細胞培養系でアルカリフォスファターゼ活性を上げ、骨様組織形成を促進する。この新しい成長因子を生体活性セラミックの骨内埋入時、界面に投与し生体活性セラミックの骨結合を促進、増強する事を証明した。 2:AW-GCの骨内での吸収 高い生体活性を持つアパタイト-ウォラストナイト含有ガラスセラミック(AW-GC)の成長因子キャリアーとしての適性を調べるため、AW-GCの70%多孔体を家兎大腿骨内に埋入し、その吸収過程を観察した。多孔体内には早期に材料表面に沿って骨形成が起こり、その後AW-GCは骨との結合を保ったまま、リモデリングを受けながら吸収されていった。その吸収率はほぼ一定で、12ヶ月で70%が吸収された。コントロールとした同気孔率、気孔径のハイドロキシアパタイトは、多孔体内の骨形成が有意にAW-GCに劣り、またほとんど吸収を受けなかった。AW-GCは成長因子キャリアーとして有望であると考えられた。 3:AW-GC多孔体を用いた骨修復実験 上記2の結果を受けて、AW-GCと成長因子による骨再生実験を行った。AW-GCの多孔体(気孔率70%)の円柱にb-FGF水溶液を陰圧含浸させ、家兎大腿骨に埋入し、術後1、2、3、4週で脱灰標本、非脱灰標本、マイクロCTを用いて評価した。FGFを含浸しない群をコントロールとした。 脱灰標本では、FGF群でコントロール群よりも多くの血管進入が見られたが、骨形成は両群間で差が無く、FGF投与が骨形成には反映されなかった。
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