関節軟骨は関節腔側に自由表面を持ち、骨側と辺縁部に各々軟骨下骨終板と滑膜に接する境界面を持つ。これらの界面の破綻が軟骨実質の変性・破壊をもたらすことは容易に想像される。本研究では、これらの界面の正常構造と、関節症・関節炎における変化を明らかにすることを目的としたものである。 1.関節軟骨最表層 (1)最表層の生化学:これまでに、成熟した関節軟骨の最表層には独立したコラーゲン線維層が存在することを形態学的に明らかにした。免疫組織化学的手法を用いて最表層のコラーゲン型を検討し、最表層を構成するコラーゲン線維は実質のそれとは生化学的に異なることが判明した。 2.軟骨滑膜移行部組織 (1)関節炎における変化:コラーゲン誘発性関節炎(CIA)ラットにおける経時的な変化を組織学的・免疫組織学的に検討した。正常では同部は線維芽細胞様細胞と線維性組織で構成されていた。関節炎では、線維芽細胞様細胞の増殖と線維性組織の肥大化を認め、関節炎の進行とともに酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ(TRAP)陽性の単核細胞が出現し、骨外側面を吸収していた。このTRAP陽性細胞の出現は骨髄内での出現に先行していた。 3.骨軟骨移行部 (1)関節炎における軟骨下骨の破壊:CIAラットにおいて軟骨滑膜移行部組織の骨髄内への侵入の時期に一致して、骨髄内のTRAP陽性細胞が急速に増加し骨破壊が進行していた。関節近傍の海綿骨量の推移は組織学的所見と一致していた。終末期にも、関節軟骨石灰化層は残存し、最も抵抗性の高い組織であることが判明した。
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