関節軟骨は関節腔側に自由表面を、骨側と辺縁部に各々軟骨下骨と滑膜に接する境界面を持つ。これらの境界面は特有な形態を備えており、関節症や関節炎などにおいては変化が初発する部分と考えられる。関節症や関節炎の病態解明と治療法開発に資するため、(1)関節軟骨最表層の生化学、(2)関節炎における滑膜軟骨移行部の変化と軟骨下骨の破壊、(3)関節炎における骨関節破壊の薬物による抑制効果、(4)関節炎の滑膜と骨髄における破骨細胞分化関連遺伝子発現の経時的変化について検討し、以下の結果を得た。 (1)最表層は滑膜組織と同様にI型とIII型コラーゲンから、そしてその下層の軟骨実質はII型コラーゲンから構成されており、最表層は関節の発生段階における滑膜間葉の遺残と推論した。 (2)コラーゲン関節炎(CIA)ラットにおける関節炎の初期変化は滑膜軟骨移行部組織の増殖と炎症細胞浸潤で、酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ(TRAP)陽性細胞は増殖した滑膜下の皮質骨外側面に初めて出現し、骨を吸収破壊していた。次に、増殖した滑膜の骨髄内への侵入の時期に一致して、骨髄内にTRAP陽性細胞が急速に増加し骨破壊が進行していた。 (3)CIAラットへの第三世代の窒素含有ビスフォスフォネート投与によって、関節近傍海綿骨の骨量減少と関節炎、骨破壊は有意に抑制された。間欠的なヒト副甲状腺ホルモン投与は関節炎に影響を及ぼさなかったが、骨量減少を有意に抑制した。この機序は、骨形態計測学的検討から骨形成の促進とこれに続発する骨吸収の抑制であることが判明した。 (4)関節炎の進行に伴い骨髄の炎症性サイトカインやRANKLのmRNAにはほとんど変化はなかったが、滑膜のそれらには有意な変化が見られ、関節炎における破骨細胞誘導には滑膜由来の炎症性サイトカインとRANKLが主役を担っていることが明らかとなった。
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