A.軟骨下骨と変形性関節症の関連 変形性関節症自然発症モデルであるHartley系guinea pigの関節軟骨変性に伴う軟骨下骨構造と骨代謝回転の変化について、変形性関節症を発症しないWeiser-Maple(WM)系を対照として検討した。WM系と比較して、Hartley系では関節軟骨変性が見られる前には軟骨下骨の萎縮と骨形成亢進が、進行過程では軟骨下骨硬化と骨形成亢進及び骨吸収低下が見られた。したがってOAの発症と進展には軟骨下骨構造と骨代謝回転が関与することが示唆された。 B.骨粗鬆症治療薬が関節炎に与える影響 (1)エストロゲンの影響 7か月齢SD系雌ラットのコラーゲン関節炎に対する卵巣摘出とエストロゲンの影響を検討した。卵巣摘出(エストロゲン不足状態)により、関節炎の発症頻度とその程度は有意に増加した。その変化はエストロゲンを投与することにより有意に抑制された。したがって、エストロゲンはラットコラーゲン関節炎を抑制することにより関節破壊を抑制する可能性が示された。 (2)ビスフォスフォネートが関節炎に与える影響 7か月齢SD系雌ラットのコラーゲン関節炎に対するビスフォスフォネート(minodronate)の影響を検討した。予防的投与を行った群では関節炎の発症頻度とその程度は有意に抑制されたが、治療的投与を行った群では、関節炎抑制効果は予防的投与を行った群に比べて少なかった。したがって、ビスフォスフォネートにおいても同様にラットコラーゲン関節炎を抑制することにより関節破壊を抑制する可能性が示唆された。 C.骨粗鬆症治療薬による骨量増加に伴う脊柱管狭窄症の可能性 ラットの高骨量モデルを作成し、腰椎骨量をDXA装置を用い、脊柱管径と脊柱管内骨面のリモデリングを組織学的骨形態計測法で分析した。上皮小体ホルモン投与により、脊椎の骨量は有意に増加したが、脊柱管管腔径と内骨面の骨形成には明らかな影響は及ぼさなかった。したがって、顕著な骨量増加作用を持つ上皮小体ホルモンの投与により、脊柱管狭窄症のような病態(副作用)を呈する可能性は非常に少ないと考えられた。
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