再生医工学で再生した軟骨を下肢荷重関節の軟骨移植に応用するためには、移植片の再生軟骨が高度に分化していること、荷重に耐える軟骨下骨が存在することが必要である。これらの条件を満たす骨軟骨片を作るために、ポリグリコール酸(PGA)不織布を鋳型として再生医工学で作製した軟骨組織を骨組織とともに臼蓋に移植し経時的変化を組織学的に検討した。 ビーグル犬(1才8.5〜13.1kg)の右側膝蓋大腿関節軟骨を採取、軟骨細胞を分離(1.8×10^6個)し3週間の単層培養を行った。脛骨近位より採取した5〜10mm四方の骨膜の片面に同サイズのPGA不織布を縫着し、骨膜-PGA接合体を作製した。培養した軟骨細胞(5.5×10^7個)を骨膜-PGA接合体に播種し、三次元培養を行った。8週間の培養後、腸骨より採取した自家骨にこの組織片を縫着、左側臼蓋上方にこの骨軟骨複合体を軟骨組織が関節面を向くように移植、固定した。移植後12週における移植骨軟骨片の生着状態、肉眼、組織所見を評価した。 三次元培養後PGA不織布を足場として骨膜上に軟骨組織の形成を認めた。自家移植後12週の時点では、移植骨の骨癒合は良好に得られていたが、移植片と大腿骨頭間には瘢痕様組織が充満しており組織学的にも軟骨基質の乏しい線維軟骨をわずかに認めるのみであった。この原因として瘢痕形成により培養軟骨組織が障害された可能性が高く、関節包の再建やフィブリン糊の使用等により瘢痕を防止することが必要である。
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