実験動物として11週齢のSprague-Dawleyラットを用いた。大腿骨骨幹部に骨延長器を装着した後、骨幹部の骨切りを実施した。1週間のlag phaseをおいた後、1日2回、0.25mmずつ21日間の骨延長の操作を行った。骨切り後1週間で骨切り部周囲に仮骨の形成がみられ、延長終了時には仮骨はさらに成長していた。延長終了後6週間では、遠位骨片および近位骨片からのびてきた仮骨が癒合していた。この後、延長期のスクリューを大腿骨から抜去して、延長仮骨の成熟を促した。 現在、21日間の骨延長終了直後、骨延長終了後3週、6週、9週、12週、15週において、仮骨延長部における骨強度試験、pQCT、赤外分光法、固体NMR法で仮骨延長部の成熟度を評価している。 まず、基礎実験で実施したラット大腿骨の成長過程では、以下の変化が観察された。 1.骨皮質における海綿骨密度、皮質骨密度は、いずれもが増加した。 2.骨強度試験における3点曲げ試験では、stiffness、strengthともに上昇して、成長とともに骨強度が高くなったことが示された。 3.外骨膜周囲径および内骨膜周囲径は、成長とともに次第に拡大した。 4固体NMR法で算出されるT1緩和時間が次第に延長しており、成長とともに固体の強度が増していることを示した。 5.赤外分光法で求められる骨塩/骨基質比は、成長とともに次第に高くなっており、骨基質に対する骨塩の相対量が高まった。 ラット大腿骨仮骨延長部の成熟過程では、上記3の現象が異なっており、外骨膜周囲径は一時的に拡大するが、次第に縮小する。しなしながら、最終的には、仮骨延長部の外骨膜周囲径は、もとの骨幹部に比べて明らかに拡大していることが明らかになった。生物物理学的な特性は、成長と仮骨延長部の成熟過程との間には、類似の現象がみられている。 現在、実験動物数を増やして、統計学的検討を実施している段階である。
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