[研究目的] 急速破壊性股関節症(RDC)は1年以内という短期間で股関節の著しい破壊・変形を来し、患者の日常生活を高度に障害する、原因不明の疾患である。RDCは、他の股関節の破壊を来す疾患である変形性股関節症(OA)、関節リウマチ等と比べ、その臨床経過が非常に急速であることが特徴である。一方、破骨細胞は生理的な骨吸収や炎症性疾患における骨破壊に関与すると考えられている。今回RDCの骨関節破壊における破骨細胞の関与を検討する事を目的とした。 [方法と結果] 1.関節滑膜細胞からの破骨細胞形成系の樹立 RDC並びにOA患者より手術時に採取した滑膜組織を用いて酵素処理後に約2週間培養を行い、この培養系における破骨細胞の形成に関与する各種サイトカイン、成長因子を検討できる培養系の確立を目指した。更に改善が必要であるがほぼ培養手技、培養結果は安定して検討できるようになった。 2.成熟破骨細胞の単離と機能解析 採取した滑膜細胞から成熟破骨細胞の単離を試みた。滑膜細胞培養開始後24時間でのTRAP染色において、特にRDCで成熟破骨細胞の存在が考えられた。破骨細胞形成系よりもこの系の方がRDCの病態の検討に適すると考え、以降この方法で得られた破骨細胞の機能解析(骨吸収能、カテプシンK・カルシトニンレセプターの発現、破骨細胞生存の検討等)を行っている。 3.本疾患で破骨細胞形成に影響を与えている因子の検討 (1)滑膜細胞中に存在するストローマ細胞、マクロファージの活性を検討するために準備段階としてそれらと共存培養するためのセルラインを入手し、まずその活性を検討した。前者としてUMR106細胞、後者としてRAW、THP-1細胞を用いてRANKL mRNAの検出、破骨細胞への分化能を検討中である。 (2)RDC・OAの滑膜細胞培養上清中のRAW細胞の破骨細胞分化に与える影響について検討した。OAにおいてその培養上清が破骨細胞分化を抑制する結果が得られ、そのメカニズムについて検討中である。
|