研究概要 |
本研究は、マウスにおいて外来遺伝子を組織特異的に発現させる技術を利用し、Ewing肉腫やPNETの原因遺伝子を肉腫の母地組織に特異的に発現させる着想である。これにより肉腫を発生するモデルマウスを分離し、Ewing肉腫やPNETの発生機序を生体内で明らかにすることを目的としている。平成13年度は、肉腫原因遺伝子(EWS-FLI)を導入したトランスジェニック(Tg)マウスを分離した。また、このTgマウスを、Cre DNA組み換え酵素を神経堤で特異的に発現するTgマウスと交配させて、2系統のDNA組み換えマウスを分離した。 1.EWS-FLI遺伝子を導入したTgマウスを作製するために、遺伝子導入用のpCAG-CAT-X-polyAカセットにflagタグ付きEWS-FLI cDNAを挿入した。通常の方法に従い、受精卵にDNAを注入して誕生した子マウスをスクリーニングした結果、2系統のTgマウスを分離した。両系統とも、生殖能力を有し、現在F2世代まで継代・維持している。 2.Cre DNA組み換え酵素を神経堤で特異的に発現するTgマウス(Dev Biol.1999,212:191-203)を熊本大学から分与された。このTgマウスとEWS-FLIのTgマウスを交配させて、現在までに系統が異なる2匹のDNA組み換えマウスを分離した。この内、24系統由来の組み換えマウスは失明、後足などの異常が認められ、誕生後4ヶ月で死に至った。この組み換えマウスの臓器の異常を検討中である。また、Cre酵素によるCAT遺伝子の除去や、EWS-FLI遺伝子の臓器特異的発現をPCR法やノザーン法で調べている。一方、32系統由来の組み換えマウスは、誕生3ヶ月現在において外見、行動などに異常が認められない。今後、32系統由来の組み換えマウスの数を増やして、長期に渡り肉腫発生の有無を観察する。
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