研究課題/領域番号 |
13671526
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
吉田 幸一 札幌医科大学, 医学部, 教授 (60117653)
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研究分担者 |
和田 卓郎 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (00244369)
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キーワード | 肉腫 / 疾患モデルマウス / 染色体転座 / 融合遺伝子 / Cre-loxP DNA組み換え / トランスジェニックマウス / がん / ETS転写因子 |
研究概要 |
本研究は、マウスにおいて外来遺伝子を組織特異的に発現させるCre-loxP技術を利用し、Ewing肉腫やPNETの原因遺伝子を肉腫の母地組織に特異的に発現させ、モデルマウスを分離する着想である。さらに、培養細胞に原因遺伝子を発現させて、肉腫原因遺伝子の産物である融合転写因子が制御する遺伝子を同定し、肉腫の発生機序を明らかにすることを目的とした。Ewing肉腫遺伝子(EWS-FLI)を導入したトランスジェニック(Tg)マウスを2系統分離した。これらのTgマウスは通常通り、繁殖し、また飼育できた。次に、Cre酵素を神経堤由来組織で発現しているTgマウスと交配させ、DNA組み換えを起こしたマウスを2匹分離した。この内、24系統由来の組み換えマウスは生まれつき全盲であり、前肢と後肢が麻痺し、および尾の湾曲が認められた。通常の固形餌の代わりにチーズを摂食させたが、誕生後4ヶ月で死亡した。一方、32系統由来の組み換えマウスは、誕生後1年4ヶ月の現在において外見、行動などに異常が見られない。また、いずれのDNA組み換えマウスにおいても、腫瘍は認められなかった。 一方で、我々はEwing肉腫の融合遺伝子を導入した培養細胞株において、発現の挙動が変わる遺伝子を見出した。この実験系において、融合遺伝子が細胞外マトリックス成分のテネシンと転写制御因子Id2の遺伝子を活性化することをcDNAアレイ法で明らかにした(Genes Chromosome & Cancer 2003;Oncogene 2002)。また、c-mycの発現誘導、およびTGFβ-2やSmad3の発現阻害を見出した。これらの増殖関連遺伝子の挙動は腫瘍細胞にみられる盛んな増殖に寄与していると推定される。Ewing肉腫発生の機序を明らかにするために、これらの標的遺伝子と腫瘍化との関係をさらに、解析する予定である。
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