研究概要 |
方法:雑種成犬30頭を用い、以下の6群を設定した。A群非手術群、B群(n=5);バルーンのみを挿入したsham群、C群馬尾に圧迫をかけ、解析時にバルーンを除去した状態で解析した群、D群、E群、F群;馬尾に圧迫をかけ、解析時にバルーンを膨らませたままの状態で解析した群の6群である。解析時に、A, B, C, D群にはセロトニン0.5μMのみ、E群、F群はセロトニン投与前にセロトニン受容体拮抗薬(E群;0.5μg/ml、F群;0.05μg/ml)を投与した。ビデオカメラを設置した顕微鏡により第2または第3仙椎神経根の血管を60分間記録し、記録ビデオでの血管径と血流量の計測を行なった。 結果: 1.血管径 A群とB群でセロトニン投与直後から血管の拡張傾向が認められ、C群とD群では、血管の収縮がみられた。C群とD群ではA群とB群に比較して、有意に血管が収縮していた(p<0.01)。E群とF群では、両群とも血管径は変化せず、有意に血管径の収縮が抑制された(p<0.01)。 2.血流量 A群とB群でセロトニン投与後に血流量は減少せず、C群とD群では血流量は減少した。C群とD群ではA群とB群に比較して、有意に血流量が減少した(p<0.01)。E群とF群では、血流量の減少が抑制され、セロトニン単独投与のD群と比較して有意に増加した(p<0.01)。 考察:セロトニンは圧迫のない状態の神経根内の血管は拡張させるが、慢性圧迫下の神経根内の血管に対しては血管収縮と血流量の減少を引き起こすことが明らかになった。また、5-HT_<2A>受容体拮抗薬は、セロトニンによる慢性圧迫下での神経根内血管収縮反応を抑制し、血流量の減少を抑制する効果がある。馬尾・神経根の血流低下により引き起こされる間欠破行を改善させる可能性がある。今後、腰部脊柱管狭窄の保存療法の1手段として、有効性が期待できる。
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