軟骨型分化機能の発現は、運動器、特に関節機能を営む生体部分に発現する。本来軟骨型分化機能の発現が認められない組織でも、摺動様機能を持つことにより発現することが知られている。たとえば後天的に、摺動様機能が得られた部分としては、股関節部分における脱臼性股関節症の関節包があり、関節軟骨機能を担うに至り、軟骨型分化機能の発現を示すようになる。今回分析した同様症例の関節包でも常に発現が認められ、特に加重部近傍に、その発現が高くなる傾向が明らかになった。現在その部分における各種軟骨関連遺伝子の発現の変動を検索し、それぞれの相互関連を検討している。これらを検討することにより、異なった物質の軟骨分化に対する、時間的、位置的関連が明らかになる。一方、臨床症例では数多くの未知な因子が複雑に絡むため、より詳細な検討のため動物実験を並行して行っている。家兎膝伸展モデルにより、股関節が亜脱臼を示すことが知られている。さらに分析を容易にするため、ラットを用いての検索も行っている。動物疾患モデルはほぼ完成しており、一部採取し分析したところやはり臨床材料と同様に、軟骨型分化機能の発現が認めらた。今後さらに部位並びに経過時間との関連を検索する。また、このモデルは薬剤の軟骨形成への影響を検討するモデルとなるため、今後より広い観点よりこのモデルを用いての検討を予定している。
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