研究概要 |
椎間板変性過程と神経因性疼痛の関係を明確にすることを目的に以下の実験をおこなった。ラット尾椎に機械的圧迫器を装着し、2椎間板に慢性機械的圧迫を加えた。装着8週で椎間板を摘出し、組織学的に観察した結果、減少した髄核細胞は紡錘状に変化し、椎間板変性を示唆した。摘出した髄核を椎弓切除により露出した左側L4、L5腰髄神経根に留置し、運動麻庫の有無、圧・熱刺激に対する足部の痛覚過敏発現の有無を観察した。運動麻痺の発現はなく、熱刺激に対する足部の感受性には左右差は認められなかった。しかし、髄核留置により処置側足部に圧刺激に対する痛覚過敏が観察された。機械的圧迫が加えられた髄核を腰髄神経根上に留置をしたラットでは圧迫を加えなかった髄核を留置したラットに比し、より痛覚過敏は重篤で、長期間で、髄核留置後2週まで一過性に認められた。この機械的圧迫を受けた髄核による痛覚過敏の増強効果の機序を解明する目的で機械的圧迫器装着8週で髄核を免疫組織化学でphospholipase A_2,interleukin-1β,tumor necrosis factor-αを観察した。これらは従来椎間板ヘルニアの坐骨神経痛発現に関与すると報告されている生理活性物質である。Phospholipase A_2,interleukin-1β,tumor necrosis factor-αの染色性は髄核細胞内の細胞質の機械的圧迫の有無によらず差は観察されなかった。機械的圧迫による変性髄核が疼痛をより増強する可能性があることが判明した。今後、変性髄核による痛覚過敏増強のメカニズムを解明するとともに椎間板へのOP-1作用によりこの痛覚過敏がどのように変化するかを検討する予定である。
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