研究概要 |
本研究ではまず新しい椎間板の組織培養法開発へ向けた基礎的データの収集を行った。家兎脊柱より摘出した椎間板を培養プレートウェル内に静置し多糖重合体アルジネート(1.2%)を重層後、塩化カルシウム(102mM)を添加して硬化させ、ゲル内へ完全に包埋した。ウェル内へ牛胎仔血清添加培養液を加え培養を継続した。1,2,3,4週と経時的にキレート剤でゲルを溶解させ、椎間板を回収、髄核、線維輪に分離し、両組織内のDNA、ケラタン硫酸、ヒアルロン酸を含むプロテオグリカン、コラーゲンを定量した。また^<35>S硫酸の組織内への取り込み量から、プロテオグリカン合成率を測定し、加えてカラムクロマトグラフィーで新生プロテオグリカンの性状を観察した。椎間板組織を直接培養液内で培養したものを対照とした。対照群では髄核、線維輪ともに組織中のプロテオグリカン、コラーゲン量は著明に減少し、プロテオグリカン合成率も有意に低下したが、アルジネート群では全ての基質含有量が対照群に比し有意に高濃度に維持され、プロテオグリカン合成率の低下もみられなかった。クロマトグラフィー解析では対照群で正常椎間板内には存在しない小分子量プロテオグリカンが経時的に増加したが、アルジネート群ではその増加が抑制された。以上から、アルジネートへの包埋により椎間板からの基質溶出がある程度防止でき、細胞の基質産生能も維持される事が判明した。しかし、正常椎間板と比較すると基質含量は少なく、特に髄核において減少率が大きかった。続いて、椎間板を包埋するアルジネートの濃度をやゲル化を促す塩化カルシウムの濃度を変化させ(アルジネート1.2、2.4、3.6%、塩化カルシウム102、204、306、510mM)、密度や硬度の異なるゲルで包埋し、基質分子の喪失が最少となり、より高いレベルで代謝定常状態が維持可能な培養条件を模索した。その結果、アルジネート2.4%、塩化カルシウム510mMが最も有効な培養条件と考えられた。この条件により線維輪では4週まで、髄核でも2週までは比較庭高濃度に基質含量が保持された。今後は種々の生理活性物資の添加や特殊静水圧加圧チャンバーの使用でさらに高いレベルで代謝定常状態が維持可能か否か検討を続ける予定である。
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