研究概要 |
変形性関節症の治療のための軟骨細胞を凍結保存し、その生存率、代謝活性、また成長因子に対する反応について実験を行った。 (方法)幼若雌豚の四肢関節軟骨を採取し浮遊培養後、期間を変え凍結保存し、1)各凍結期間の軟骨細胞の生存率(trypan blueを用い判定)、2)各凍結期間のproteogrican(PG)及びcollagen合成能、3)各種成長因子(TGF-β,b-FGF, IGF-1)添加後のPG及びcollagen合成の変化を検討した。凍結保存は-196℃の液体窒素を用いた。凍結期間は1日、3日、1週間、2週間、4週間、12週間とした。PG合成の指標として^<35>Sを、collagen合成の指標として^3H-prolineを用いた。 (結果)1)軟骨細胞の生存率は、2週間までは90%以上、12週間までは80%以上であった。2)凍結後軟骨細胞の^<35>Sのuptakeは、無凍結軟骨細胞の^<35>Sのuptakeと比べ、各凍結期間において有意差を認めなかった。^3H-prolineのuptakeも、無凍結軟骨細胞の^3H-prolineのuptakeと比べ、各凍結期間において有意差を認めなかった。3)成長因子添加群の^<35>S uptake及び^3H-prolineのuptakeは、1週間、2週間、4週間、12週間の長期保存でもTGF-β、IGF-1、b-FGF (P<0.05)において有意に高値を示した。よって凍結期間長期の12週においてもPG及びcollagenの合成は保たれ、各成長因子添加によるPG及びcollagen合成の促進は維持されていた。 (考察)凍結保存期間12週において生存率は80%であり凍結保存後もPG及びcollagen合成は保たれていることより、凍結軟骨細胞が移植として使用可能であることが示唆された。また、移植時に各成長因子を添加することで、移植母床での軟骨細胞の合成活性が促進されることが示唆された。
|